グーグルの神様
******グーグルの神様*******
いつものショッピングアーケードで買い物をして、交差点を渡ろうとした時の事だ。それまで、下を向いてスマホをいじっていたのだが、信号が何色かを確認しようとして頭を上げた瞬間だ。
何と私はそこでグーグルの神様と目が合ってしまったのだ。
グーグルの神様とは、つまりストリートビューを撮影するあのカメラのことなのだが、私には神様の眼に見えた。慌てて自分の顔が映らないように再び頭を下げて、神様が通り過ぎるのを息を殺して待った。
しかも、そのカメラは車で移動しているものとばかり思っていたのだが、その時は登山に行くような格好をした男性がリュックに神様を入れて背負っていたのである。
それも何食わぬ顔をして、これから山にでも出かけようとしているかのように装っていた。
交差点にはたくさんの人々が行き来していたが、誰一人として、彼の存在に気づいている人はいないようであった。
それもそのはず、時間帯は午後の2時くらいだったから通行人の多くは、老人や保育士に手をつながれた幼稚園生などばかりで、ストリートビューの存在すら知らない人々が多かったせいではないだろうか。
当然、そんなカメラが移動していても誰も気づいていない。
私がそのストリートビューのカメラをグーグルの神様と言うには理由があった。
1年半ほど前に知人から、グーグルのランチに誘われて参加したことがあったからだ。
その時、グーグルの社内でストリートビューカメラが大切そうに安置されているのを見た。まるでお神輿のようだなとその時に思った。
それ以来、私はあのカメラを神と思うようになった。
神様は世界各地を行脚しておられる。こんな小さな街にも、きちんと廻っておられる。
有難いことだが何もかもお見通しのようで何だか神様の存在は少し怖い。
それ以来私は、グーグルのマップを開いて近所を散策することはあるが、どうしてもその交差点のビューだけは開くことができないでいる。