新型コロナの風景・東京②(2020年3月27日)
桜の花が、いよいよ華やぎ始めている。ここ数日、心が洗われるようなすっきりとした青空が続いていている。それなのに、新型コロナの影響でお花見の自粛を首都圏を中心に促されて気持ちが萎える。
若い人を中心に、桜の花の美しさに待ちきれないというように散歩に訪れている。
先週の土日は、大勢の人が桜を見に繰り出していた。ほんの一瞬ではあったが、桜を見ている間は新型コロナのことを忘れていられたのだろう。
しかし、その足元は奈落の底へと落ちていく薄氷の上を歩いていることをどれだけの人が分かっているのだろうか?
薄氷にひびが入ったというようなことを意味する新型コロナウィルスに纏わる不穏なニュースが毎日流れている。身が縮む。いつ、音を立てて落下していくのか?その下に待っているのは予測不可能な恐怖の日々なのか?
これは夢なのではないかと思うことが幾度かあった。こんなことは今までなかったことだから、何度も何度も夢、そう悪夢ではないかと思うが、その度に現実に引き戻された。
イタリアで起きていることもアメリカで起きていることも全世界で起きていることも全てが真実なのだ。
窓の外から、川辺に拡がる桜は何事もないように花びらを開き始めている。
この美しい桜を見ていると、やはりあれは夢だったと思いたくなる。
私は、できることなら今は桜になりたい。川辺の土手に、いつもの年と変わらない風情を見せている桜に。
街の風景は何も変わっていない。建物も植物も鳥たちも、いつもの年と変わっていないのに人間だけが目に見えない敵のために苦しんでいる。