新型コロナの風景⑧ 11月23日 東京 銀座 駆け込みGoToキャンペーン

 ここ数日のコロナウィルス感染者数が急増している。当初の予測よりもそのスピードは速い。東京などは1日の感染者数500人越えが3日も続いた。こんな状況になれば、きっと人々は外を出歩かなくなるだろうと私は予測した。

ところが、テレビを賑わしていた感染者の増加など、どこ吹く風というように街には人が溢れていた。金曜の夜7時ごろに私は仕事を終えて銀座に出た途端、人の波に揉まれた。やれやれと思いながら品川駅についた時は歩くこともままならないくらいの人でごった返していた。

人混みに紛れながら、周囲を歩く人の顔を見てみると幸せそうな笑顔があちらことらに溢れている。こんなにコロナウィルス感染者が増えてしまったのだから、きっと街ゆく人々は不安な気持ちでいるだろうと思っていた。ところがそれは逆だった。人が集まれば集まるほど大きな声が聞こえている。もう、話がしたくて仕方がなかったというように、特に若い人たちは、とにかく騒ぎたい気持ちで一杯のようだった。

久しぶりの出会いに話が盛り上がり、コロナのことなど忘れてしまうのだろう。また、言葉には不思議な魔力がある。話している間は、不安を取り除いてくれる。思考が変わるのだろう。言葉で世界が一瞬に変わってしまう力だ。その言葉の魔力によって一瞬だけでも、人々の不安は払拭されて今が天国のように思えるのかも知れない。それとも、不安はあるが「赤信号、みんなで渡れば怖くない」的な乗りなのか?

勿論、その両方があるのだろう。しかし、それ以上に、こんなに感染者が増えたことでGoToキャンペーンが終了してしまうのではないかと駆け込みで繰り出している人も多いのだろう。こんなカラっ騒ぎも、もしかしたら今だけ……?だったらできるだけ体験できる楽しみを使い切って騒ごうよという損得の気持ちが働いているのか?

GoToを全く利用しなかった私にはその気持ちを想像することが難しいが、私の友人などは積極的に利用して楽しんでいるようだった。もし、GoToが終わりになるという話を聞いたら彼女も急いで駆け込むに違いない。

そんなことを考えながら群衆の顔を伺うと「もう、何でもいいから、元の暮らしに戻してよ」という思いが滲み出ていた。