新型コロナの風景⑩ 12月25日 東京 クリスマスケーキ難民

昨日はクリスマスイブ。仕事も休みだったので買い物ついでに雰囲気作りのクリスマスケーキでも買おうかと軽い気持ちで家を出た。

例年なら、街角やお店の前にたくさんのケーキを乗せた台が並んでいるのに今日は見当たらない。おかしいなと思いながら繁華街に向かっていくと、老若男女、大勢の人の流れができていることに気がついた。これはいつもの年の人の流れと同じだと思い、私は何となく、この流れに入るのは危険と感じた。

最近のコロナ新規感染者数が日々、最多記録を更新していることを考えると、隣の人がコロナである確率はかなり高くなってきている。

できるだけ人がいないところにケーキはないものかとあちらこちらを回ってみた。どのお店もクリスマスとは思えない地味な装いがされていることに気づいた。それなら、さすがにデパートに行けばあるだとうと思って入ってみた。それが、洋菓子売り場の前を通ってもケーキと呼べるものは無い。こんなに大勢の人が集まっているのに、皆、困っているのではないかと周囲を見渡した。やはり、何かを探しているように動き回っている人が多い。

やっとケーキを販売しているお店を見つけたら、そこには長い行列ができていた。コロナの3蜜を避けたい私は、慌てて、それは無理でしょうと逃げるように外に出た。

こうなったら、コンビニの安価な「いちごショート」で構わないのではないかとコンビニに飛び込んだ。ところが、普段は300円前後で販売されているはずの2個入りの「いちごショート」が見当たらない。「えっ何で?」と思いながら店の中を見回してしまった。

そういえば、入り口のところで3000円〜4000円くらいの箱入りのケーキを女の子が販売しているのを見た。そうか、こういう日は、やはり、安いショートケーキなんかで済まされたく無いというコンビニ業界の策略か?

私はそんなに大きなケーキを買うつもりがなかったので、ここでも挫折した。

やっと見つけたのは駅地下にあった小さなケーキ屋さん。コンビニで普段、2個で300円前後の価格で売られているものと似たケーキにトナカイの飾りがちょこんと付いていた。それが1個500円近い値段になっていた。それを必要数購入すると、慌ててそこから離れた。それでもクリスマスケーキが買えたことで安堵な気持ちになって、心が少し温かくなっていくのが分かった。

家に着いて、テレビを付けるとニュースのアナウンサーの声が聞こえてきた。

「クリスマスケーキ難民は…」という話題だった。

クリスマスケーキの販売が今年は極端に少なかったらしい。そんなことは知らないまま右往左往する人々がいたという報道だった。

私はまさに、クリスマスケーキ難民の一人だったことをそのとき知った。